ブログ

2026年9月1日 空き家・不動産

空き家の固定資産税は本当に6倍?特定空家・管理不全空家の条件と対策を司法書士が解説

相続で実家を引き継いだものの、遠方でなかなか手が回らない——。そんな空き家について「放置すると固定資産税が6倍になる」という話を聞いて、不安になった方は多いのではないでしょうか。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新しています。

ただ、この「6倍」という数字は、そのままでは正確ではありません。本記事では、住宅用地特例のしくみ、2023年12月に施行された改正空家法の「特定空家等」「管理不全空家等」の指定条件と手続の流れ、そして実際に税額がどう動くのかを、福岡・古賀市の司法書士が整理して解説します。

この記事の要点(先に結論)

  • 税額が上がるのは「空き家だから」ではなく、市区町村長から勧告を受けたときです(指定された時点ではありません)
  • 外れるのは住宅用地特例(小規模住宅用地は固定資産税1/6・都市計画税1/3)。ただし負担調整措置の上限があるため、単純に6倍にはなりません
  • 2023年12月施行の改正空家法で「管理不全空家等」が新設され、特定空家等の一歩手前でも勧告の対象になりました
  • 勧告の前には必ず指導・助言の段階があります。ここで手を打てば特例は維持できます

なぜ「6倍」と言われるのか——住宅用地特例のしくみ

土地の固定資産税は「課税標準額 × 税率(標準税率1.4%)」で計算します。この課税標準額を大きく引き下げているのが、地方税法(第349条の3の2、第702条の3)が定める住宅用地特例です。人が住むための土地の税負担を軽くする趣旨の制度で、住宅が建っている土地に適用されます。

区分固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)評価額 × 1/6評価額 × 1/3
一般住宅用地(200㎡を超える部分)評価額 × 1/3評価額 × 2/3

「6倍」という数字は、この小規模住宅用地の1/6が1(本則)に戻るという、課税標準ベースの単純計算から来ています。つまり「空き家だから6倍」ではなく、「住宅用地特例が外れると課税標準の計算が変わる」という話です。そして特例が外れる引き金になるのが、空家法にもとづく勧告です。

「特定空家等」と「管理不全空家等」——2つの区分

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は令和5年に改正され、2023年12月13日に施行されました。この改正で、従来の「特定空家等」に加えて「管理不全空家等」という区分が新設されています。

特定空家等(空家法2条2項)

次のいずれかの状態にあると認められる空家等です。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

管理不全空家等(空家法13条1項)

適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態と認められる空家等です。屋根や外壁の一部が剥がれかけている、庭木や雑草が敷地を越えて伸びている、といった「特定空家の一歩手前」を早い段階で捉えるための区分といえます。

項目管理不全空家等特定空家等
位置づけ放置すれば特定空家等になるおそれ現に危険・有害等の状態
行政の措置指導 → 勧告助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行
命令・代執行規定なしあり(命令違反は過料の対象)
住宅用地特例勧告で除外勧告で除外

手続の流れ——特例が外れるのは「勧告」の時点

どちらの区分でも、いきなり税額が上がるわけではありません。市区町村はまず指導(助言)から始め、それでも改善されない場合に勧告へ進みます。国土交通省のガイドラインでも、所有者による自発的な改善を促すため、指導を経ていなければ勧告はできないとされています。

  1. 助言・指導……状態の改善を求める行政指導。この段階では税額は変わりません
  2. 勧告……指導しても改善しない場合に行われます。ここで住宅用地特例が外れます
  3. 命令……特定空家等のみ。従わない場合は過料の対象になります
  4. 行政代執行……特定空家等のみ。行政が除却等を行い、費用は所有者に請求されます

⚠️ 税額に反映されるタイミング

固定資産税の賦課期日は1月1日です。勧告を受け、1月1日の時点でまだ必要な措置が講じられていない敷地について、その年度の課税から住宅用地特例が外れます。たとえば12月に勧告を受けた場合、間もなく翌年1月1日の賦課期日を迎えるため、翌年度の課税から影響が出ることになります。逆にいえば、賦課期日までに改善して勧告が撤回されれば、特例は維持されます。

なお、国土交通省が令和7年12月に公表した調査(令和7年3月31日時点)によると、空家法の施行(平成27年)からの累計で、特定空家等に対する助言・指導は42,768件、勧告は4,153件、代執行(略式代執行を含む)は878件でした。さらに、令和5年12月の改正法施行後だけを見ても、管理不全空家等に対する指導は3,211件(185市区町村)、勧告は378件(40市区町村)に達しています。全国の空き家数と比べれば勧告に至るケースはなお一部にとどまりますが、施行から1年余りの間に管理不全空家等への勧告が378件出ている事実は軽くありません。改正で管理不全空家等が加わった以上、これまでより早い段階で行政が関与する流れになっている点は意識しておくべきでしょう。

実際にどれくらい上がるのか——概算例

特例が外れた土地は「非住宅用地(商業地等)」として扱われ、負担調整措置により課税標準額は評価額の70%が上限となります。つまり、1/6がそのまま1になるわけではありません。土地の評価額900万円・面積180㎡(すべて小規模住宅用地)、固定資産税率1.4%・都市計画税率0.3%の自治体を例にすると、次のようなイメージです。

項目特例あり勧告後(特例なし)
固定資産税の課税標準150万円(900万×1/6)630万円(900万×70%)
固定資産税(1.4%)約21,000円約88,200円
都市計画税の課税標準300万円(900万×1/3)630万円(900万×70%)
都市計画税(0.3%)約9,000円約18,900円
土地の税額合計約30,000円約107,100円(約3.6倍

この例では、土地の固定資産税は約4.2倍、都市計画税は約2.1倍、合わせて約3.6倍です。「6倍」ほどの跳ね方にならないのは、次の理由からです。

  • 負担調整措置の上限……課税標準額は評価額の70%が上限。1/6と比べても、理論上4.2倍が上限になります
  • 都市計画税は元が1/3……外れても最大3倍。しかも同様の上限があるため、実際はそれ以下です
  • 200㎡を超える部分は元が1/3……敷地が広いほど、上がり幅の割合は小さくなります
  • 家屋分の税は別……建物にかかる固定資産税は住宅用地特例と無関係で、そのままです

ここで一点、誤解しやすいところを補足します。「負担調整措置があるから、上がるとしても前年度から少しずつだろう」という理解は誤りです。負担調整の計算に使う「前年度課税標準額」は、前年中に地目・区画・形質・特例適用等の変更があった場合、実際の前年度の額ではなく比準課税標準額(前年度も本年と同じ状況=非住宅用地であったとした場合の課税標準額)に置き換えられるからです。したがって、住宅用地時代の低い課税標準額を起点に段階的に上がるのではなく、原則として初年度から評価額の70%(商業地等の上限)まで上がります。上の表で課税標準額が150万円から630万円へ一度に動いているのは、このためです。

※上記はあくまで概算です。実際の税額は評価額・面積・自治体の税率・負担調整の適用状況によって大きく異なります。都市計画税を課していない自治体もあります。具体的な金額は物件所在地の市区町村の税務担当窓口へ、税務上の判断が必要な場面は税理士へご確認ください。

⚠️ 勧告がなくても特例が使えない場合があります

総務省の通知(平成27年)では、構造上住宅と認められない状況にある場合使用の見込みがなく取壊しを予定している場合居住のために必要な管理を怠っていて今後人が住む見込みがないと認められる場合は、そもそも住宅用地特例の対象となる「住宅」に該当しないとされています。勧告を受けていなくても、老朽化が進みすぎた家屋では特例が適用されないことがある、という点は押さえておいてください。

勧告される前にできること——3つの選択肢

繰り返しになりますが、税負担が変わるのは勧告の時点です。指導・助言の段階、あるいはその前に手を打てば、特例は維持できます。選択肢は大きく3つです。

1. 管理を続ける

年に数回の通風・通水、庭木の剪定、屋根や外壁の点検・補修を続けていれば、管理不全空家等と判断される可能性は下がります。遠方でどうしても通えない場合は、空き家管理サービスを利用するのも現実的です。当グループでは空き家管理・不動産売却のサポートを行っています。

2. 売却する

使う予定がないのであれば、建物が傷みきる前の売却がもっとも合理的なケースが多いです。管理の手間と固定資産税から解放されますし、譲渡益が出ても被相続人居住用財産の3,000万円特別控除を使える可能性があります。ただし売却の前提として相続登記が済んでいることが必要です(相続した不動産を売却するまでの流れ/登記手続そのものは不動産登記サポートで承っています)。管理を続けるか売るかの判断軸は、空き家の放置リスクと「管理・売却」の判断基準で詳しく整理しています。

3. 解体する

倒壊のリスクが高い場合は解体も選択肢ですが、正直に申し上げると、解体すれば税金が安くなるとは限りません。家屋分の固定資産税はなくなる一方で、更地は住宅用地ではなくなるため、土地の住宅用地特例も翌年度から外れます。解体費用も原則自己負担です(自治体に補助金制度がある場合もありますので、事前に確認する価値はあります)。「解体して売る」のか「建物付きで売る」のかは、費用と手取りを比べて決めるべきところです。

よくある質問(FAQ)

Q. 空き家を持っているだけで固定資産税が6倍になりますか?

A. いいえ、所有しているだけでは変わりません。市区町村長から特定空家等または管理不全空家等として勧告を受け、1月1日(賦課期日)の時点で改善されていない敷地について、住宅用地特例が外れます。また外れた場合も、負担調整措置により課税標準額は評価額の70%が上限のため、土地の固定資産税は理論上でも最大4.2倍程度です。

Q. 特定空家等と管理不全空家等はどう違いますか?

A. 管理不全空家等は「放置すれば特定空家等になるおそれがある」段階、特定空家等は倒壊のおそれや著しい衛生上の有害性など、現に問題が生じている段階です。管理不全空家等には命令や行政代執行の規定がなく、市区町村がとれる措置は指導と勧告までにとどまります。ただし、勧告により住宅用地特例が外れる点は両者とも同じです。

Q. 勧告を受けた後に修繕すれば、特例は元に戻りますか?

A. 勧告に対応して必要な措置を講じ、勧告が撤回されれば、その後の賦課期日(1月1日)時点では住宅用地特例の対象に戻ります。判断するのは自治体ですので、勧告書を受け取ったらできるだけ早く、求められている措置の内容と期限を確認したうえで、市区町村の担当窓口へ相談してください。

Q. 建物を解体して更地にすれば、税金は安くなりますか?

A. 一概には言えません。家屋分の固定資産税はなくなりますが、更地は住宅用地ではなくなるため、土地の住宅用地特例も翌年度から外れます。解体費用も自己負担です(自治体の補助金制度がある場合もあります)。売却予定の有無も含め、費用と最終的な手取りを比較して判断することをおすすめします。

Q. 空き家の名義が亡くなった親のままです。固定資産税は誰に課税されますか?

A. 賦課期日(1月1日)より前に登記名義人が亡くなっている場合、その不動産を現に所有している相続人が納税義務者となります(地方税法343条2項)。相続人が複数いれば連帯納税義務となり、代表者に納税通知書が届く取り扱いが一般的です。多くの自治体で「現所有者申告書」の提出も必要になります。なお2024年4月から相続登記は義務化されていますので、まずは名義を整えることをおすすめします。

まとめ

「空き家を放置すると固定資産税が6倍」というフレーズは、住宅用地特例が外れることを指した言い方としては的を射ていますが、倍率としては正確ではありません。負担調整措置の上限があるため土地の固定資産税は理論上でも最大4.2倍程度で、都市計画税や家屋分を含めた実際の増え方は物件ごとに異なります。ただし上がるときは段階的ではなく初年度から一度に上がりますので、その点は覚悟しておいてください。そして何より、特例が外れるのは勧告を受けたときであり、その前には必ず指導・助言の段階がある——ここが一番大事なポイントです。

とはいえ、税金以上に重いのは、倒壊や落下物で近隣に損害を与えてしまったときの所有者としての責任です。「そのうち考える」を続けるほど、選べる手は少しずつ減っていきます。当事務所では、相続登記から空き家の管理・売却まで、グループ会社のめんたいこ不動産と連携して一気通貫で対応しています。まずはご自身の状況を整理したい方は、無料の相続AI診断(約3分・匿名)もご利用ください。古賀市・福岡県内はもちろん、全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。初回相談は無料です。