相続した実家の空き家を放置するリスクと「管理・賃貸・売却」の判断基準|司法書士が解説
親御さんが住んでいた実家を相続したものの、生活の拠点は別の場所にある——。「とりあえず今のままに」と決めたまま、気づけば1年、2年。空き家のご相談は年々増えています。
本記事では、空き家を放置すると何が起きるのかを整理したうえで、「管理する・貸す・売る」のどれを選ぶかの判断基準を、福岡・古賀市の司法書士がお伝えします。
この記事の要点(先に結論)
- 空き家は人が住まないと傷みが早く、倒壊や落下で近隣に損害が出れば所有者が賠償責任を負います(民法717条)
- 2023年12月13日施行の改正空家法で、特定空家等の手前の「管理不全空家等」も勧告の対象に。勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます
- 判断軸は①距離と通える頻度 ②建物の状態と築年数 ③維持コスト ④将来使う予定の4つ
- どれを選ぶにしても出発点は相続登記(2024年4月から義務化・原則3年以内)
空き家を放置すると、何が起きるのか
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸・空き家率13.8%と過去最多。よくある話ではありますが、責任を負うのは所有者一人ひとりです。
1. 建物は急速に傷み、防犯面でも危険になる
換気されない家は湿気がこもり、カビ・木部の腐朽・シロアリが進みます。「傷んだから空き家になる」のではなく「空き家だから傷む」のです。加えて、チラシが溜まり庭が荒れた家は管理されていないと外から一目でわかり、不法投棄・放火・不法侵入の被害が集中しがちです。
2. 近隣に損害を与えたら、所有者が賠償する
瓦の落下やブロック塀の倒壊で通行人や隣家に損害が出たときの根拠が、民法717条の土地工作物責任です。まず占有者が責任を負いますが、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が責任を負い、免責の規定はありません。空き家には占有者がいないため、実質的に所有者が負います。保険会社によって「一般物件」扱いとなる場合もあるので、火災保険もご確認を。
3. 行政の「助言・指導」、そして「勧告」
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、倒壊など著しく保安上危険・著しく衛生上有害・著しく景観を損なう・生活環境の保全上不適切、のいずれかの状態の空き家を「特定空家等」とします。市町村長は助言・指導、勧告、命令と進め、最終的な行政代執行(強制解体等)の費用は所有者に請求されます。
さらに2023年(令和5年)12月13日施行の改正法で、その手前の「管理不全空家等」(空家法13条)が新設されました。倒壊寸前でなくても、適切に管理されていなければ助言・指導の対象となり、改善しなければ勧告を受けます。そして勧告を受けた敷地は、土地の固定資産税を軽減する「住宅用地特例」から外れます。小規模住宅用地は課税標準が6分の1に軽減されているため、外れれば負担は大きく変わります(空き家の固定資産税が6倍になる条件)。
⚠️ 「まだ何も言われていない」は安全のサインではありません
行政が空き家を把握するきっかけは、近隣からの相談であることが少なくありません。助言・指導の段階なら選択肢は広く残りますが、勧告まで進むと税負担が変わった状態で判断することになります。
「管理・賃貸・売却」を決める4つの判断軸
「どうしたらいいかわからない」の多くは、判断材料が揃っていないことが原因です。次の4点を数字と事実で埋めてみてください。
① 物件までの距離と、通える頻度
自主管理は月1回程度の換気・通水・郵便物の回収・外観確認が目安です。片道2時間超、帰省が年数回という状況なら現実的ではありません。誰がどの頻度で動くのかを決められるかが分かれ目です。
② 建物の状態と築年数
木造戸建てなら雨漏り・シロアリ・傾きの有無が判断材料です。1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物は旧耐震基準にあたります。賃貸なら内装や水回りの工事が前提になるため、費用を家賃で回収できるかを試算してください。
③ 維持コストを「年額」で書き出す
固定資産税・都市計画税、火災保険料、電気水道の基本料金、剪定や草刈り、見回りの交通費、管理サービス料。合計して「年間いくら」を出し、あと何年払うのかを掛け算すると判断が具体的になります。
④ 将来使う「具体的な」予定があるか
「いつか子どもが住むかも」は、多くの場合は予定ではなく希望です。誰が・いつから・どう使うのかを言葉にできるかを基準にしてください。言えないなら、賃貸か売却に進むほうが合理的です。
管理・賃貸・売却を比較する
| 項目 | 管理する | 賃貸に出す | 売却する |
|---|---|---|---|
| メリット | いつでも自分で使える。将来の活用の選択肢を残せる | 家賃収入で維持費をまかなえる。人が住むので傷みにくい | 維持コストと管理責任から解放。現金化で分割しやすい |
| デメリット | 税金・保険・草木の管理など手間と費用が続く。建物は傷む一方 | 初期のリフォーム費用。空室・滞納・修繕の負担。入居中は売りにくい | 手放すと戻せない。希望額で売れるとは限らない。譲渡所得税がかかる場合も |
| 向いている人 | 数年以内に使う予定が具体的にある/近くに住み通える | 建物の状態が良い/賃貸需要のある立地/初期投資を回収できる | 遠方で通えない/使う予定がない/相続人が複数で分けたい |
「決めない」ことも一つの選択であり、それが最もコストの高い選択になりやすい点は意識してください。放置中に相続人の誰かが亡くなると(数次相続)権利者が増え、合意そのものが難しくなります。
どれを選ぶにしても、出発点は相続登記
管理を続けるにせよ、貸すにせよ、売るにせよ、名義が亡くなった方のままでは前に進みません。売買契約を結んでも買主への所有権移転登記ができないからです。
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。施行日前の相続も対象で、原則2027年(令和9年)3月31日までが目安です(相続登記の義務化について)。売却の流れは相続した不動産を売却するまでの流れ、手続きは不動産登記サポートをご覧ください。
遠方に住んでいて通えないときは
空き家が放置される最大の理由は「通えないから」です。ここは仕組みで解決できます。
- 空き家管理サービスを使う……月1回程度の巡回、換気・通水、郵便物の確認、外観の写真報告などを代行してもらえます。自分で通う交通費と時間を考えれば割高とは限りません
- 売却を前提に動く……使う予定がないなら、傷みが進む前のほうが買い手も価格も有利です
当事務所はグループ会社のめんたいこ不動産と連携し、相続登記から空き家の管理・売却までを一つの窓口でお引き受けできます(空き家管理・不動産売却)。手続きはオンラインで完結できます。
よくある質問(FAQ)
Q. 空き家を放置すると罰則はありますか?
A. 放置しているだけで直ちに罰則が科されるわけではありません。ただし「特定空家等」と判断され市町村長の命令に従わない場合は過料の対象となり、行政代執行で解体されて費用を請求されることもあります。2023年12月の改正で、手前の「管理不全空家等」も勧告の対象になりました。
Q. 勧告を受けると固定資産税はどれくらい上がりますか?
A. 勧告を受けた敷地は「住宅用地特例」から外れ、土地の税額は大きく上がります。増加幅は評価額や自治体によって異なります(詳しくは空き家の固定資産税が6倍になる条件)。
Q. 相続登記をしないまま空き家を売ることはできますか?
A. 実務上はできません。亡くなった方の名義のままでは買主への所有権移転登記ができないため、売買の前提として相続登記が必要です。2024年4月から義務化されており、いずれ必ず行う手続きです。
Q. 遠方に住んでいます。空き家の管理を誰かに頼めますか?
A. 頼めます。空き家管理サービスを使えば、月1回程度の巡回・換気・通水・郵便物の確認・外観の写真報告などを代行してもらえます。当事務所ではめんたいこ不動産と連携し、管理から売却までご相談いただけます。
Q. 相続した空き家を売ると税金はかかりますか?
A. 譲渡所得が生じれば所得税・住民税の対象になります。一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円の特別控除の特例」を使える場合がありますが、期限が2つある点にご注意ください。制度自体は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡が対象ですが、それとは別に「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があり、いずれか早い方までに売却する必要があります。また、令和6年1月1日以後の譲渡では、その家屋・敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上の場合、控除額の上限は2,000万円となります(2人以下であれば3,000万円)。適用の可否は必ず税理士や税務署にご確認ください(3,000万円特別控除)。
まとめ
空き家は、放っておいて良くなることがありません。まずは〈通える頻度〉〈建物の状態〉〈年間の維持コスト〉〈将来使う予定〉の4点を書き出してみてください。それだけで、管理・賃貸・売却のどれが合うのかはかなり見えてきます。
当事務所では、相続登記や遺産分割協議書の作成から、グループ会社めんたいこ不動産と連携した空き家の管理・売却までワンストップでご対応できます。何から手をつけるか整理したい方は、無料の相続AI診断(約3分・匿名)をご利用ください。古賀市・福岡県内はもちろん、全国どこからでもオンラインでご相談いただけます。初回相談は無料です。